「キッチン回顧録」04

前3回、ご家族で住まわれる住宅のキッチンをご紹介してきました。

今回は趣向を変えて、賃貸集合住宅(祐天寺アパートメント)のミニキッチンです。ワンルームの賃貸のお部屋に置かれるキッチンというといわゆるミニキッチンが定番ですね。しかし、既製品のミニキッチンは、事務所の給湯室など隠れた場所にはいいかもしれませんが、住まいの中のひとつしかない空間に堂々と置かれるには寂しすぎる。

 

そこで、最小限の機能(IHヒーター+小さな流し+少しの作業スペース、そして耐久性)を相当なローコストで、ワンルームの中でも軽やかに楽しげに見えるようデザインしてみました。床の色をまるでキッチンの影のように切替えてみたのも、床の汚れを目立たなくする工夫と、遊び心の合わせ業です。

 

 

「キッチン回顧録」03

「キッチン回顧録」02

「キッチン回顧録」01

「キッチン回顧録」序章

私たちの製作キッチン

「墨田の家」オープンハウスのレポート

昨日は「墨田の家」のオープンハウスでした。

オープンハウスをご快諾くださったお施主さま、お休みのところお越しいただいたみなさま、ありがとうございました。

アトリエ、本棚のLDK、ロフト、屋上、照明器具、洗面廻り、キッチン、本当に見所満載の「墨田の家」です。ご覧になっているみなさまと目の前のことを話しているだけでも話が尽きず、わたしたちもこのお宅の魅力を改めて感じ入った1日でした。

この家では、お施主さまがほとんどの塗装をご自身でされています。1階、2階とも、天井が高いお宅です。床・壁・天井を塗装されるだけでも本当に大変なこと。でも、その上に、トイレは落ち着いた雰囲気の色に、キッチンは木目の透け具合がとても風合いよく軽やかに、と場所によって塗り分けられ、格好よく居心地のよいお宅に仕上がっていました。

「墨田の家」の詳細は、これから「設計事例」でたくさんの写真でお見せしたいと思います。

 

LDKです。足場板の本棚、圧巻です。

キッチンの風合いもとてもいいです。

 

物語

長女がミヒャエル・エンデの「モモ」を読んでいるのを見かけました。

わたしも同じ年頃の同じ季節に同じようにコタツに足を突っ込みながら呼んでいた記憶があります。

思えば、わたしは物語が好きです。思春期の入口ではミヒャエル・エンデの作品に世界の広がりを感じていました。思春期の出口付近では、当時「ノルウェイの森」で脚光を浴びていた村上春樹の世界にどっぷりと浸りました。今でも、宮沢賢治など読み返しては、寒い雪山を思います。決して熱心な読書家ではありませんが、物語はずっと好きでした。

 

物語は設計をする上でも基盤となっています。

寝室でどんな物思いにふけるのだろうか、キッチンでどんな朝を迎えるのだろうか、夜の深い暗さの中で湯船につかるとき、何を見つめるのだろうか、、、。もちろんこれからのお施主さんの生活は、あらゆる可能性に満ちていて、私の想像力の及ぶ範囲ではありません。

ただただ、この家のすべての場所から、住まい手の物語がはじまれるような家にしたい、家のあちこちで始まった物語がやがてひとつの壮大なストーリーに育っていくような家にしたい、という気持ちで設計を進めています。お施主さんとは一緒に序章を書き上げている気持ちです。そして、そこから始まる物語をとても楽しみにしています。

 

 

◇「墨田の家」オープンハウスのお知らせ◇

1月22日(日)11時~16時 墨田区にて

詳細はこちら

 

自分でつくる

「墨田の家」で使われているフローリングや木製ドアのメーカー、岡崎製材のMさんが事務所を訪ねてくださりました。

「墨田の家」では、お施主さんが室内塗装のほとんどをご自身でされていることをお話ししたところ、「それはすごくいい!」と大変共感され、「家づくり」の中でお施主さんのDIYがもたらす「よいこと」について、話がとても盛り上がりました。

わたしたちのお施主さんは、範囲や内容、時間のかけ方などは様々ですが、何かしらご自宅の建築作業に関わられる方が多くいらっしゃいます。作業自体はとても大変ですが、作業を通じてご自身の家についてより深く理解され、より愛着を増していらっしゃることに、私たち設計者もとてもうれしく思います。

壁の塗装中の「墨田の家」。

この後、壁につけられた印に沿って、足場板をつかった棚が取り付けられました。最後に取り付いたこの足場の板の荒い素材感に想像以上の力があり、空間がぐっと引き締まりました。

 

◇「墨田の家」オープンハウスのお知らせ◇

1月22日(日)11時~16時 墨田区にて

詳細はこちら

 

鉄骨造住宅の良さ

私たちはこれまで鉄骨造の住宅をいくつか設計してきました。そこで感じた鉄骨造のメリットについて書きたいと思います。

一つめは、設計の自由度が高まるという点です。鉄骨造の中でも鉄骨ラーメン構造というものを採用すれば、地震力・風圧力に抵抗する耐力壁は基本必要ありません。ラーメン構造というのは、柱・梁と床面の剛性のみで揺れに抵抗する考えの構造です。

例えば間口の狭い土地で道路側にビルトイン型の駐車スペースをもうけようとすると1階に道路に面する壁が取れなくなります。そのような形は木造では難しいのですが鉄骨ラーメン構造だと可能になります。

また、他の構造に比べて躯体の量(体積)が小さいため床の厚みを薄くすることが出来たりもしますので。高さ制限の中でできるだけ天井高を取りたい場合にも有利になります。

つづきはまた。

 

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バラガンの住宅建築

バラガンの建築には興味を持てずにいました。外界と切り離された小宇宙のような空間が耽美的過ぎると感じていたからです。

バラガンの建築に共感を覚えるようになったのは彼の自邸の外観を知ってからです。

彼の自邸は例にもれず、光・色と素朴な素材がつくる独特な豊かな空間を内にもっていますが、その外観は、それが著名な建築家の作品(しかも自邸)とは思えないほど飾り気がないものです。メキシコシティー都市部の建築はセキュリティーのためか道に対しては閉鎖的なつくりが多いようです。また隣りと接して建てるのが普通なのか、バラガン自邸も隣家と壁が連続しておりどこからが彼の建築なのか分かりにくいです。驚くほど周囲に同化しており外観に建築作品っぽさがないのは拍子抜けしてしまいます。(大きい家であることにも驚きますが)

この建築に見られる「そっけない外観+豊かな内部空間」という対比的な組み合わせを知り、これが住宅建築のあるべき姿なのかも知れない、と思い始めました。

つづきはまた。

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