久しぶりに椅子のことを。
Thomas BernstrandがデザインしたVivi Chair(Bla Station、2013)という椅子で、これも最近気になったデザインです。
脚も座面・背板とも成形合板でできています。この椅子は確かに魅力的なのですが、それがどこに起因するものなのかうまく言い表すことができません。成形合板の椅子なんていまはたくさんありますし、最小の部材が互いに構造的に補強しあうミニマルで合理的なデザインであることも魅力の十分な説明にはなりません。
デザイナー自身の説明を読むと少しわかった気がします。
フレーム材の曲がる部分のrを小さくすることに気を配ったそうです。確かに最初期の成形合板家具、たとえばアアルトのデザインなどに比べると曲率はだいぶ小さいです。これは技術的な挑戦でもあると思います。このことが、合板の椅子にしてはスクエアでかちっとした新しい印象をつくっているのでしょう。
しかしそうだとすれば、デザインの価値は細部に宿るという当然のことに納得する一方、20世紀の初頭にアアルトが全く新しい椅子を考案したときのダイナミズムに比べると小さい話である気もしてしまいます。
素直な合理性と幾分かの革新性、これが現代デザインの精一杯のところなのか、そんなことも考えさせられますが、好きなデザインの椅子です。