10mの家
東京都 木造3階建て 専用住宅 82㎡
都心部の住宅では敷地の有効利用のため、3階建てになることが多くあります。また、都心部ではほとんどの地域が準防火地域か防火地域です。準防火地域内で木造が可能なときでも、火災の影響をおさえるためにその構造体は強化石膏ボードで覆われ、木造の「木」は全くみえなくなるのが普通の建て方です。おなじ木造でも柱や梁が印象的な昔の民家とは全く別の質感の建物です。
ここでは防火という都市的な要望も満たしながら木構造のよさも感じられる、新しい3階建て木造住宅を考えました。木構造の梁や筋交いは、木がある一定の深さまで炭化するとそれ以上は燃えない性質を利用した「燃え代設計」を利用し、石膏ボードでの被覆をなくして、木のまま見せています。一定間隔で並ぶ梁や筋交いがそのまま見えることで、「木」でつくられた家であることをしっかりと感じられるようになりました。
また、通常、木造3階建てですとかなりの量の構造壁が室内に出てきますが、ここでは、ボードでふさがれた壁ではなく奥が見通せる筋交いで建物を支えるように計画しました。結果、敷地形状を利用したた奥行きのある内部空間が、たとえば、リビング~筋交い~階段~筋交い~キッチンのように、階全体の奥行きが連なって感じられる空間、階の長さを楽しめる空間ができました。
駐車スペースの脇を通って玄関ドアを入ると、細長い玄関の奥に、壁掛け暖炉のある書斎、階段、階段越しにキッチンがちらりと見える、住宅内でありながら、どこかの路地裏のような空間があります。2階にはキッチンとリビング、3階は浴室・洗面室と寝室が2部屋で構成されています。3階の浴室・洗面室は、通風のための窓のほか、階段のトップライト、前面の廊下からの光がたっぷりと入り、温室のような心地よさのある水廻りになっています。