普通の家

普通の家

東京都 鉄筋コンクリート造2階建て 専用住宅 29

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単身で生活をするための小規模な住宅です。6.4坪の土地に建つRC造2階建ての建築です。最初の話合いでクライアントが自ら描いた平面図を受け取りました。ほぼその通りに出来上がっています。1層当り5坪に満たないそのプランの半分近くを階段が占めています。この階段には当初驚き戸惑いました。しかしこの緩勾配の大きな階段は、1・2階を一体にする、階段それ自体が居場所になる、将来も上りやすい、といった点で合理的です。熟考されたものであること、クライアントにとって自然、普通なものであることが徐々に理解されていきました。

もちろん私たちはデザイン、性能、ディテールに深く関わっています。外観はまるで隣接するマンションの付属建物であるかのような似通った無難な色調としています。風景に埋没しデザインが突出しない「普通」の状態を目指しました。住宅の外観はできるだけ主張の少ないものにしたいと常に考えていますが、寺院とその境内の緑が多い落ち着いた土地柄から特にそういうあり方が良いと思いました。しかし近くに寄れば、給湯器や室外機等の設備が外壁に付着していないことや、途切れることなく塗りまわされた左官仕上げなどで、普通とは少し違う様子がわかります。この左官材は外断熱に直接塗られています。内部では面積に比して多くの「居る場所」ができました。写真撮影に予想以上に時間がかかったときにそれが実感されました。多様な場所は小ささを払拭するに十分な心理的な広がりをつくっています。

工事はきわめて困難でした。通常は資材を室内空間に仮置きして工事を進めることができますが、ここでそれをすると作業スペースが取れないのです。関係者の忍耐力と工夫、近隣の協力で完成にいたることができました。

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