昨日大掃除の写真をInstagramに載せたところですが、今日、明日は営業。
年末年始のお休みは12月31日~1月3日です。
今年は何かと自分たちの、事務所の特色について考えたり説明したりすることの多い年でした。
小規模な設計事務所(いわゆるアトリエ)について、みなさんはどのようなイメージをお持ちですか。美学優先の芸術作品をしての建築を設計する、もしくは断熱性能や変形狭小敷地に強いなど、何か専門分野を特化している(「売り」がある)という認識が一般的なのではないでしょうか。この事務所を開設した当時は今よりもその風潮が強く、私たちもなにか「売り」を持つ方がよいのでは、と漠然と思うこともありました。
しかし、お引き受けした仕事に誠意をもって向き合うときに、シャープな造形など何かに特化したものを作ろうとは、どうしてもならない。あれもこれもと欲張ってしまう。十何年も前のことですが、私たちが設計したものを見に来てくれた建築雑誌の編集者には「とらえどころがない(はっきりとした「売り」がない)」と一刀両断されてしまいました。
今ここまできて、私たちが設計したいのは、本当の意味で「見たことのない」「新しい」建築だと思っています。建築家個人をリソースとした造形や特定の性能などに特化していると、どこかでルーティーンが入り込んできて「見たことがある」と感じさせてしまう。そのルーティーンを避けるために必要なことは「決定しない姿勢」ではないか。私たちは、建築設計にまつわるありとあらゆる要素に可能性を感じ大事にしながら、それらの可能性がでつくすまですべてを保留状態に置いて設計を進めます。何か一つを決定することは、決定したこと以外の可能性を排除していくことに他ならず、早い段階で決定事項を増やしてしまうとまだ見ぬ可能性をつぶしてしまいかねないからです。
それら「建築の可能性」たちを保留しながら、あの道この道を模索しながら、可能性間のバランスにも注意を払って検討を進めます。敷地、コストなどの比較的大きな条件がもたらす「可能性」、暖かさ/涼しさ、光の入り具合、窓からの眺め、使いやすさ、依頼主特有の条件、そして、部屋そのものの眺め・格好良さ、触り心地などのより感覚的な細かな「可能性」までを一気に俯瞰しながら建物の全体像を構築するーその作業は音楽で言うミキシング作業のようなものかもしれません。こっちのつまみを少し上げそっちのつまみを少し下げ微調整を重ねながら、全体のハーモニーをまとめ上げていくのです。
ホームページに載せる事例が増えてきて、私たちの作り方を感じていただけるようになってきたのでしょうか。ご自身・ご家族の思い描く空間像の実現のために、可能性の洗い出しからミキシング作業まで、根気よく対話を続けてくださる方が増えています。
一緒に「ミキサー」を覗き込み、ときにミキサーのつまみを増やしたり減らしたりしながら何か月かかけて(時には年単位で)設計することで、私たちの力だけではたどり着けない深い味わいのある「見たことのない」「新しい」建築が実現されています。私たち自身、それら新しく建った建物を見ては励まされ、また次を頑張りたいと思うのです。
今年は竣工した建物も多く、特にその感を強くした1年でした。
今年一年を振り返ったブログにしようと思って書き出したのに、事務所全体を振り返る話になってしまいました。
みなさま、どうぞ佳いお年をお迎えください。
ことしは3月からMさんがスタッフとして来てくれました。新卒で右も左もわからないのにいきなりいろんな仕事がふりかかってきて、大変だったことと思います。来年の活躍も期待してます!