バラガンの住宅建築-2 積極的に風景に埋没すること

ルイス・バラガンの住宅建築のつづきです。バラガンの住宅には、自邸に見られるような「そっけない外観+豊かな内部空間」という対比的な特徴がある、というところまで前回書きました。

この内外デザインの温度差は、建築のデザインとは内外違わず徹底して行うべきと刷り込まれている頭には新鮮なものだし、私がぼんやりと考えていた住宅建築のあるべき姿にも思えて、ここをうまく説明できないかとずっと思っておりました。今日はそこにトライしてみます。そのためにまず住宅という建築が他の建築と何か違うところがあるのか、そういうところからはじめてみます。

私は、住宅と、公共建築・大型建築とは相当な違いがあると捉えています。「住宅はあらゆる建築の基本」という言説が昔から多数見られますが、私にはある一面ではそうは思えないところがあります。

それは住宅は個人の持ち物であるということと関係します。

まず、公共建築は、

・みんなのものだから、誰か一人が自由につくることはできない

・みんなのものだから、まちの中で周囲との調和を超えた誰もが認識できるようなシンボル性が必要

そういうものです。

公共建築や大型建築は、誰かの好みでつくるわけにはいかず、時代の大義名分を踏まえた組織的な議論を経てつくるより他ありません。また、利用者に認知してもらうために一定度「目立つ」必要があります。あるいは、共有の資産であることを表現する形態上の特徴(=シンボル性)が求められます。

住宅はこれがまったく逆です。

・個人のものだから、誰か一人が好みで(法律の範囲内で)自由につくっても咎められない

・個人のものだから、まちの中でシンボル性を必要とする理由があまりない

「そっけない外観+豊かな内部空間」といったあり方はこの2点に沿うものです。
ここでいう住宅の「まちの中でのシンボル性」については建築の専門家の中でもっと議論されるべきことです。いま世にあふれる建築系のメディアを見れば、特徴の強いシンボリックな外観を持つ住宅建築がたくさん見られますが、私には多くのものは、どう好意的にみても設計者の表現欲発散以上の意味を感じることができません。

ここでバラガン自邸に戻ります。もう一度その外観を見てみましょう streetview 。特に何も感じない建築がそこあるだけ、といった具合に形態上のクライマックスのないものが建っています。

ここはよく考えるべきところです。建築家バラガンが、自分が設計した建築の外観に何の意図も込めないことがありうるでしょうか。私はこの建築で彼は風景に埋没する住宅、というあり方を提示していると思うのです。これは言いかえれば住宅においては空間以上に大事なものはないという主張です。左隣のピンク色の家は実は彼が設計した旧自邸、後のオルテガ邸なのですが、同様にかなり凡庸な見た目です。両邸の境目は判然とせず、多くの建築作品に見られる完結性・自立性とは程遠い様子です。バラガンを論じた書物の多くはその内部空間の魅力を説明しようとしていますが、私はむしろこのバラガン自邸の外観のあり方がとても気になります。

そこに住む立場になれば、自分の家を素敵に見せたいという気持ちは当然であり、住宅の外観は整ったものである必要はあります。しかし過度な個性やシンボリックな表情は必要でしょうか。
地味な外観とそこからは想像できないような魅惑的な室内という、バラガン自邸のようなものを積極的にとらえたとき、今ならどんなものがつくれるだろう、夏の終わりの休日をそんな妄想をしながら過ごしました。

 

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ラフプランのご提案

夏休み中、いくつかラフプランのご提案をさせていただいています。

これまで設計を通じてたくさんの方のお話を伺ってきましたが、あたらしい出会いの中で、1度も同じようなお話、同じような住まい方はなく、プロジェクトごとに新鮮さにあふれていて、わたしたちもたくさんの刺激を受けています。

写真の図面はイメージです(ご提案資料ではありません)

 

 

 

 

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見積書と格闘中

もう1ヶ月近く、あるプロジェクトの見積書チェックが続いています。建設会社に疑義を上げ、修正見積もりをまたチェックして疑義を上げ・・・この繰り返し。結果これまでの見積書を積み上げると厚さ10cm以上に。この間いろいろなことを考えます。これまでの経験から、見積書にはその会社の工事に対する姿勢がどうやっても透けて見えてしまう、ということを感じます。使用材料と労務費の量を細かく正確に計算して積み上げると金額がかさんでくるのが普通です。競争入札であれば見積りの精度をあげるほど不利になると言えるでしょう。しかし正確な見積りができる会社は工事も丁寧なのです。

見積書を読み込んでいくと、計算の仕方、語句の使用法などに「一貫性」を感じる場合とそうでない場合があります。一貫性とは自分なりのルールを徹底することであり、すなわち自身を律することです。こういった姿勢が実際の工事内容と無縁であるはずがありません。見積書には、金額の多寡以外に、施工者の質を判断する重要な情報がたくさん含まれているのです。

 

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地盤調査時にわかる設計事務所のメリット

住宅を新築するときには地盤調査が必要です。地盤調査は計画の初めのうちに行うのが普通です。調査結果を踏まえた設計を行う必要があるからです。
建物の構造形式を決定するのに地盤調査結果は重要な判断材料になります。建物の単位面積あたりの重さは一般にRC、鉄骨、木と軽くなるため、同じ地盤強度でも、RCなら補強が必要だが鉄骨・木なら不要といったことも起こります。地盤補強には相当のコストがかかる場合もあり、一定の金額のなかで建築をしようとする場合、地盤補強の要・不要、必要ならその金額、を早期にわかっている必要があります。
ここで、私たちのような、さまざまな構造の住宅が設計できる設計事務所のひとつのメリットが見えてきます。構造形式が決まっているハウスメーカなどでは、地盤が弱かった場合には、「ついてなかった」とあきらめて想定以上のお金を払って補強をするか、計画を縮小、中止するしかないでしょう(その時点で解約ができるのかどうかはわかりませんが)。しかし、設計事務所の場合は構造を変えてコスト調整ができるので、建物規模を縮めての金額調整をしなくて良いケースもありえるのです。
資金の最大限有効な使い方の助言をし、家づくりのいろいろな局面を柔軟に乗り越えていくのが設計事務所の特徴で、それは家づくりの初期段階から発揮されるものなのです。

 

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