八王子方面へ

先週木曜は八王子方面に。

午前中は、14年前に完成した建物の点検に行きました。7、8年ぶりの訪問です。

午後は進行中の「panorama」の鉄骨検査です。

 

八王子市街地から30分ほど西にある小室鉄建さんの工場で行われました。

正木構造研究所の方々と行きました。

 

重要な部材を、見やすいように配置してくれていました。この写真は柱を現場ジョイントするその片方の部分です。上下の柱をあわせたときに、良好な溶接のために合わせ目がV字の溝になるようにします。これを「開先(かいさき)」と言ます。切断面が斜めなるような加工がされているのがわかります。

全体的に精度高く製作されていて安心しました。

2月の建方(たてかた・・・骨組みを組上げる作業)を目指し、加工作業が続きます。

 

サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会の近代性

本年もよろしくお願いいたします。

 

仕事は少しずつはじめようと思います。

今年最初のブログは好きな建築の話題を。

 

取り上げるのはパラーディオのサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会(ベネチア)のファサードです。

唐突ですが、私はこの17世紀初頭の近世建築に「近代」を感じます。

 

ルネサンスでは古代神殿建築の正面の形がキリスト教会に適用されました。

サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会では、縦横比の違う2つの神殿ファサードが重ねられているのがわかります。これは、内部における身廊、側廊の高さの違いをどうやって建物正面に表現するかという問題に対する、とてもスマートな解答になっています。

 

マントヴァに建つアルベルティのサン・タンドレア教会は神殿利用の早い例です。サン・タンドレアには座りの悪さを感じていました。

ここでは神殿の形は側廊の高さにあわせてあり、身廊は神殿の頂点より高い位置までそびえています。その身廊の端部がファサードにも顔を見せています。神殿の上にトンネルの入口のような形がぴょこんと乗っている不思議な立面構成。これが長年の違和感だったと最近やっと気づきました( 背の高い身廊の存在を変に隠蔽しないところにアルベルティの真面目さが出ているとも思います)。

サン・タンドレアとサン・ジョルジョ・マッジョーレ。ならべて見ると二人の建築家ともが、内部空間と外観の関係という普遍の課題に何らかの答えを出そうとしていたことがわかり、ほほえましくも思えてしまいます。

 

ルネサンス様式の進化と見るべきでしょうか、アルベルテイに比べるとパラーディオの方法のなんと洗練されていることか。二重のファサードはまさにレイヤーです。重く密な石を積み上げた建築でこれほどの透明感と複雑性をもつ「表層」が他にあるでしょうか。

ファサードをよく見ると設計の工夫を見ることができます。少し前面に出ている身廊用の高いファサードは立体感のある円柱で支えられています。逆に、奥まった低いファサードは出っ張りの少ない角柱で平面的な印象です。二つのファサードを区別して前後関係をはっきりさせようとしているようです。角柱と円柱では柱間距離をわずかに違えて角柱が円柱に隠れないようにしているのも同じ理由と思います。

 

パラーディオによる同じくベネチアに建つイル・レデントーレ教会も二重ファサードの建築です。比べてみると面白いです。重心が低いプロポーションはより安定感があります。サン・ジョルジョ・マッジョーレ以上に整ったファサードです。本当にきれいな立面です。しかし違う部分もあります。低いファサードの破風の三角形が中央部で消失している点です。透けるものが重なっているようなレイヤー的な印象はサン・ジョルジョ・マッジョーレの方が勝っています。

 

パラーディオは、内部空間と外観の整合という(わりと単純な)問題を、「表層の奥行」とでも言うべき矛盾をはらむ抽象的なテーマにシフトさせているかのようです。そこに私は、近世を突き抜ける感覚を覚えてしまうのです。