現場レポート 3つの現場に

3つの現場を回るためにあっちこっちに。

午前には杉並区の集合住宅プロジェクトでの「中高層条例」の近隣説明と測量の確認に。

午後は川口市のオフィスリノベーションプロジェクトの家具工事の確認に。

午後もう一つは「音のある家」。基礎工事の完了を確認に。

今日はほとんど事務所にいませんでした。

 

 

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がけ条例

去年から今年にかけて手がけた計画のいくつかは、何らかの形でいわゆる「がけ条例」が関係していました。そこで感じるのはがけ施策の矛盾です。都内の場合は東京都建築安全条例の第6条に「高さ2m以上のがけ」に隣接するときの規定があります。擁壁がある場合はその擁壁の安全性を証明しなければならない、証明できないときは高さの2倍の距離を離して建物を建てる、防護壁を建てるなどの措置が必要、といった内容のものです。安全性の証明とは、主に擁壁の工作物確認申請書・検査済証の存在を確かめることです。

擁壁というのはだいたいが高いほうの土地に入っているので、がけ下で建設行為を行う場合は、人さまが提出した確認申請の資料を調べるという気が進まない調査をすることになります。私たちが遭遇した一つのケースでは、擁壁に思われた壁が実は建築物と一体の構造体であった、というものでした。そうなると擁壁単独の確認申請はいくら探しても出てこない、ということになります。このケースのときは隣地建物所有者が竣工図を見せてくれてそのことが判明しましたが、そこにたどりつくまでにえらく苦労をしました。図面を見ることができなかったら宙ぶらりんの状態でなすすべもない、ということになっていたかも知れません。

このように、2mを超えるがけ下に建設をしようとすると、なにかと面倒なことが起こります。

隣地に古い擁壁がある場合、その所有者に擁壁の補強やつくり直しを交渉することも選択肢の一つですが、擁壁の工事費は高いので、すんなり合意されることは少ないでしょう。

がけの安全性確保は大事なことですが、安全第一を標榜するなら行政は古い擁壁の持ち主にもっと積極的に補強をはたらきかけるとか、擁壁の申請情報をもっと誰もが探しやすくする(今も情報は取れるが「奥のほうにある」といわざるをえない)とか、条例がスムースに運用され効果を発揮する工夫をするべきだと思います。

今は制度上は、がけ上敷地の所有者が擁壁を築造しても、接するがけ下土地所有者に通知する義務はありません。がけの上下で情報共有の仕組みがないのはどう見てもおかしいです。

がけ下の人は他人の所有物の状態に受身でいるしかないのが現状です。こういうことを何とか改善して特定の個人に負担が集中しないようになってほしいものです。

 

現場レポート 「音のある家」02

前回の上棟式のレポートから少し間が開きましたが、先日行われた配筋検査までをダイジェストでまとめてレポートします。

 

上棟式で工事の無事をお祈りしましたら、いよいよ土工事が始まりました。

今回は敷地内の高低差が大きいので、まずは土地の低い部分を埋めて地盤改良のための重機が入れるように準備しました。土留めをして、きっちりと埋めていきます。

 

その後、現場に建物の位置出しをしたら、地盤改良の最初のひと掘りを見ようと教育委員会の方がいらっしゃいました。このあたりは埋蔵文化財包蔵地で、何か出てこないか確認されるのです。近隣では貝塚等が出ることもあるようです。結果、文化財的なものは何も出てこなかったため、このまま工事を進めてOK。もし出てくると遺跡の発掘などが行われることになり大変です。

 

いよいよ地盤改良。セメントを現場の土に混ぜ固め地盤の強さを補います。まずは施工の方々が手際よく現場の土の酸性度をチェック。中性にかなり近い数字でしたので、混ぜるセメントが中和される心配はありません。この後、地中に柱を立てるイメージで35本分の柱状改良が行われました。

 

柱状改良も無事終わったら、もう一度建物の位置を出し基礎の形に溝を掘り、捨てコンクリートを打ちます。捨てコンクリートは構造上は必要ありませんが、基礎梁の位置を正確に墨出しするために必要です。墨出しした位置の上に鉄筋工場で加工された鉄筋を並べ実際の地中梁の形、床の形に組んできます。地面を埋めたり掘ったり、ここまででおよそ1ヶ月弱。

 

そして先週、鉄筋があらかた組み終わり、配筋検査となりました。構造をみてくださっている正木構造研究所から担当のFさんもいらっしゃって、鉄筋の仕様、鉄筋同士の間隔、組まれ方など細かくご覧になられて、構造上問題なく施工されていることを確認していただきました。

 

このあと型枠を鉄筋の周りに設置予定し終えたらコンクリートの打設がはじまります。

 

 

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建築ストックの活用・・・建築基準法改正

6月に建築基準法の一部改正が公布されました。今回の改正、柱の一つは「既存建築ストックの活用」です。私が注目する具体的内容は、確認申請が必要な用途変更の規模が100㎡から200㎡に緩和される、という部分です。200㎡というと、ちょっとした規模の集客施設の計画ができるので、この改正により既存建築物の活用は確かに促進されると思われます。確認申請が不要になる=古い建築そのままでいい、ということではありませんが、手続きを省略できるだけでも計画の労力、コストが抑えられます。これから新築は確実に減っていきますが、建ってしまった建築は必ず老朽化・陳腐化するもの。その利活用市場をより活性化させようという産業面の意図があるのでしょう。それはともかく、こういうコンセプトがより柔軟で細やかなものに発展していくと、日本の都市の姿は歴史が重層する厚みあるものになっていくと思います。都市において、なんでもない建築だとしても、古いものと新しいものが共存する様は自然で豊かな状態ではないでしょうか。ひとまず歓迎されるべき改正です。

「1年以内の施行」なので、来年6月までには改正が実行されます。

 

 

鉄骨のリフォーム

最近は、鉄骨住宅のページ内容を充実させた影響もあり、鉄骨建築のリフォームのご相談も増えています。そこで感じることを今日は書いてみようと思います。

鉄骨の建築の特徴は、一言でいうと「強固な躯体と軽い間仕切り」という組み合わせでできている点です。なので、仕切りを取って部屋を広くする、仕切りの位置をずらす、というリフォームは比較的簡単です。鉄骨建築の間取りの可変性を感じる点です。木造建築はというと、間仕切りと構造壁が一体化している場合が多く、間取りの変更=構造の変更、になることがあるため、リフォーム設計の自由度は鉄骨より低いといえそうです。一方で鉄骨建築において、躯体をいじる工事、つまり柱・梁の位置を変える、床を抜いて吹抜けをつくる、という変更は工事も非常に大変であり、法規への適合性もよく検討しないといけません。しかし、このようなリフォームも、新耐震の建築で、検査済証がある場合は法的手続きがスムースにいくので、まだやりやすいです。旧耐震の建築をいじろうとするとコストと時間がかかるのを覚悟しないといけません。